絶えない創造の魂・
  
 ベリャコーヴィッチ!
 
 
▼ベリャコーヴィッチ挨拶

 ▼ベリャコーヴィッチという男

 ▼人間賛歌のアンサンブル
  絶えない創造の魂・ベリャコーヴィッチ!
    
        宇都宮吉輝氏(名古屋演劇鑑賞会・会長)
 
 東演がワレーリィ・ベリャコーヴィッチの演出で「どん底」を再演することになりました。
 私たちは東演とユーゴザーパト劇場の合作「ロミオとジュリエット」を1995年に
例会として取り上げています。 そのシンプルな舞台装置と衣裳、
死神のような仮面の踊り子が舞台をリードし、 使者を立たせたまま
その思いを語らせるなどユニークな着想で見る者の想像力を書き立て、
音楽と光を駆使して甘い恋物語から一気に悲劇へと突き進む
新しいシェイクスピアを見せてくれました。そして、二人の若者の死を通して
「いさかい」の虚しさと平和の大切さを願う 熱いメッセージは
多くの会員の共感を呼び大好評でした。
 そこで三年前に、東演がベリャコーヴィッチ演出で「どん底」を上演すると聞いた時、
私はどんな新しい「どん底」が登場するか 大きな期待をもっていましたが、
その舞台は想像していた以上に新鮮で衝撃的なものでした。
幕が開くと、パイプで組まれた二段ベッド八脚四列が斜めに
張り出している空間があるだけ。
私たちが従来の「どん底」で見られた「ほら穴のような地下室」はありませんでした。 
そのベッドを潜りぬける俳優たちの様々な動きが、 舞台を進行させ、
時にはそれが舞台装置そのものにも なっていくようにも思われるなど
私たちの想像力を触発する刺激的なものでした。
そこには、かつてのロシアの「どん底」の世界は無く、
現代のコミュニケーションの断ち切られた「どん底」の世界がありました。
そして登場人物にスポットをあて、それぞれの思いを独白のように語らせることで、
一筋縄ではいかない今日の個と 集団の関係が、 「人間を取り戻したい」という
切実な思いとそのことができない苛立ちが、 私にはより強く伝わってきました。
 ベリャコーヴィッチは、従来のスタニスラフスキーの演出を根底から解体し、
全く新しい「どん底」を見せてくれたのです。
あの「どん底の歌」に変わって、独特の民族音楽に合わせて男達が
床を踏み鳴らして踊るシーンなど、 強力なリズムのある音楽と俳優たちの躍動は、
その真骨頂といえるでしょう。 絶えず新たな創造を目差しているベリャコーヴィッチが、
今回の再演ではどんな「どん底」を見せてくれるか大いに期待し、楽しみにしています。

 

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