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役者
血のような真紅の幕がさっと上がり,
ライトを浴びたお前がこの拍手の嵐に向かって出ていく。
時化の中,暗礁を縫って船を進める船長のように,
勝利に向かってな! |

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アンナ
私の人生って何だったんだろう。
もうすぐおしまいだっていうのに……
おなかいっぱい食べたことなんてあったのかしら
。パンひときれにもびくびくして……
一生,心配ごとばかりで,ボロを着て……
ちっとも幸せじゃなかった。 |
ワシリーサ
今のあんたに何を話したって無駄だよ。
嫌いになったっていうなら,それもいいさ……
仕方ない……
さよならだね。。
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ペーペル(左),ワシリーサ(右)
(ワシ)ナターシャがお前さんのものになるんだよ。
考えてもみな!金は入るし,好きなところへは行けるしさ。 |
ペーペル
教えてくれ……神様って,いるのか?
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(二幕幕開き─住人たちの祈り)
・・・・・。 |

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ナースチャ
……彼ったら,とっても大きなピストルを胸に入れていたのよ! |
ブブノフ
……俺は嬶を好きだった,あのろくでなしをな……
どんだけ可愛がったか言えねえぐらいよ!
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ナターシャ
待ってるほうが楽なの。
だって,いつこの穴倉で死んじゃうかわからないもの。
アンナみたいに誰にも振り向いてもらえないまま,
死んじゃうかもしれない……
死んでも,涙をこぼす人もなく,惜しむ人もいない……
そう思うと怖くなるわ…… |
ルカ
銃を向けると,奴らは壁に貼りついたよ。
そこで儂は,「どうだ,撃ち殺されたいか,この盗賊ども?」と怒鳴った。
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ルカ(中央),ゾープ(ベッド上段左),アリョーシカ(右)
「もうそれは,いやというほど頼んできやした。
でも,いくら頼んでも,誰もくれやしないんで……
そのうち,こっちも悔しいやら,腹は減るやらで,ついその……」
とこうじゃ。 |

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ナターシャ
ああ……じゃ,ワーシカ!ついて行くわ! |

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役者
なあ,俺の芸名はスヴェルチコフ・ザヴォルジスキーっていったんだ!
平戸間に歓声があがり,桟敷は大入りだ。
芝居の出来は俺の肩にかかっている! |
サーチン
嘘をついた……だがそりゃ,人を救うためのものだ,これはわからなきゃいけねえ!
人への思いやりからつく嘘ってのがあるじゃねえか。
お前たちのくすんだ人生を,親身になって思いやってくれたのは,あの男一人だぜ。
お前たちに希望を与えたのは誰だ?あの男だろう……
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〔カーテンコール〕
(左から)クレーシチ,役者,ワシリーサ,サーチン
暖かい拍手をありがとうございました。
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