訃報

訃報を聞いてから、ずっと涙が止まらない。
信じたくないけれど、SNSを見る度に、SNSを見て連絡をくれる度に、実感がわく。

年齢も入団年も1つ上のあなた。
東演で20年以上一緒に頑張ってきた。
自分にとって、かけがえのない、唯一無二の存在だった。

あなたに初期の乳癌が見付かったのは2009年。
30歳だった私は、同年代の身近な人の癌に衝撃を受けた。
1年の休団を経て無事に復帰し、ベリャコーヴィッチさんの『ハムレット』や朗読劇『月光の夏』などで、東京や全国各地を元気に公演した。
転移が分かったのは2016年。
「いつまで生きられるか分からない」とあなたに言われた時のことは、今も鮮明に覚えている。

それでもあなたは治療を続けながら芝居を続けた。
『獅子の見た夢』の園井恵子、『商船ティナシティ』のコルディエのおかみさん、『美しきものの伝説』のサロメ、『歌え！悲しみの深き淵より』のアリスなど、みんなの心に残る役を沢山魅せてくれた。
小道具、衣裳、舞台の掃除、裏の作業を率先してやってくれた。
バイトや治療で出来ない時は必ず連絡をくれた。
ステージ4でもこれだけ出来るんだと生き様を見せ続けてくれた。

ドクターストップがかかり、「これ以上役者を続けられない」と4月3日の劇団総会で言われた。
あなたは、当日誕生日だった制作の横川さんを祝い、これまでの経緯や感謝の言葉を笑顔で述べて、涙ぐむ劇団員一人一人にメッセージ付きのお菓子をプレゼントとして和ませてくれた。
『歌え！悲しみの深き淵より』でやりきったと言いつつ、今後のスケジュールを聞いて「私もやりたい」「みんなが羨ましい」と言った姿は忘れられない。

それから1ヶ月経たない4月26日、故郷の岐阜県中津川市であなたは逝ってしまった。
享年45歳。
4月12日、帰郷する際の引越を手伝い、笑顔で手を振ってあなたを見送ったのが最後に見た姿だった。

キャリアの半分が病との闘いの日々。
その痛みと辛さは想像を絶する。
もっと一緒にやりたかった。
でもこれ以上あなたの苦しむ姿は見たくなかった。
今はただ、安らかに穏やかに眠って欲しい。

GW中の5月6日はあなたの誕生日。
もうお祝いすることは叶わない。
努力家でお茶目だったあなた。
よく練習していた、ダンス、ピアノ、ギター。
よく披露して笑わせてくれた、モノマネやボケ。
もう見ることも聞くこともツッコムことも出来ない。
現実を受け止めるには時間がかかりそうだが、喪失感を乗り越え、あなたの分まで精一杯生きないと、天国のあなたに面目ない。

演劇は記憶によって語り継がれる。
あなたが東演や芝居に注いだ情熱を語り継ぎたい。
あなたがみんなの心に残した足跡を一人一人が語り継いで欲しい。

古田さん、これからは美奈子さんを愛する全ての人達を天国から見守ってね。
みなちゃんが天国で喜んで悔しがる作品を生み出すので、期待しててね。

最後に、古田美奈子という素晴らしい女優さんに東演で出会い、一緒に過ごした時間に感謝を込めて。
本当に本当に本当にありがとう、美奈子。